【コラム】イヌとネコの心臓病の話2024/07/22
このコラムでは
わんちゃんやねこちゃんも人間と同様に心臓に病気を抱えることがあります。心臓は全身に血液を送り、常に動き続け、その機能は命に直結しています。このコラムでは、そんなわんちゃん、ねこちゃんの命に直接つながる心臓の病気についてお話します。
目次
イヌとネコの心臓病の種類
イヌもネコも心臓病を発症するタイミングは産まれる前から病気を抱えている先天性の病気から、生後から発症する後天性の病気まで様々です。若いからといって心臓病とは無縁ということではありません。
ネコがかかりやすい主な心臓病
【若齢時(主に先天性心疾患)】
- 動脈管開存症
- 心室中隔欠損症
- 心房中隔欠損症
【老齢時】
- 心筋症
- 不整脈
心臓病の症状
心臓病の症状のイメージですが、動悸や息切れ、倒れてしまうなどを考えられる方が多いかと思います。イヌとネコでも同じようなイメージで、病状が進行すると肺に水が溜まる肺水腫により呼吸困難を起こしたり、不整脈により失神したり、疲れやすくて散歩や運動をあまりしなくなるといった症状が出ます。
しかし、心臓病を発症した初期はほとんど症状を表さないことが多いです。心臓病をかかえているにもかかわらず、普段と変わらず元気に生活している子たちも少なくありません。
【心臓病の主な症状】
- 発症初期は無症状
- 呼吸困難
- 運動不耐性
- 失神
- 咳
- 体のむくみ
- 胸水や腹水
心臓病を見つけるには
心臓病は直接命に関わる病気なので、早期発見することが大切です。前項目でもお話したように、イヌでもネコでも病気の発症初期は症状が無いことが多いです。そして症状が出た頃には進行してしまっていることが多いです。そこで、心臓病を早期発見出来るように健康診断を受けてもらうことが大切です。
心臓病を発見するために出来る検査で最も簡単なものが聴診です。聴診は心臓の音を聞くことで、心音に雑音がないか、心拍のリズムが乱れていないか、心音の強弱などを知ることができ、そこから多くの心臓病を発見することにつながります。
しかし、注意が必要なのは全ての心臓病が聴診で見つかるわけではないということです。心臓病の中には心雑音やリズムの不整などが出ない病気もあります。特にネコの心筋症の4割が心雑音を認めないという報告もあり、進行しても雑音が出ない場合があります。イヌでも拡張型心筋症の初期は雑音が出ない場合があります。このように聴診のみで見つからない心臓病は他の検査を併用して早期発見につなげます。
心臓病の検査
【超音波検査】
心臓病の診断をする上で重要な検査の1つです。超音波検査は、エコー検査とも呼ばれており、心臓が実際に動いている様子や血流の状態を観察することで心臓の状態や心機能を調べることが出来ます。動いている心臓を見ることが出来るため、後述のレントゲン検査と比べると心臓自体のより詳細な検査を行うことが出来ます。超音波検査は通常無麻酔で行うことが出来る、体への負担が少ない検査です。
【レントゲン検査】
レントゲン検査は心臓だけではなく、心臓と密接に関連していて症状の発現にも関係している肺を同時に検査することが出来ます。超音波検査のように動いている様子や細かい臓器の構造は分からないのですが、広い範囲の主に心臓の大きさや大まかな形状、肺や肺の周りに水が溜まったりしていないかを検査することが出来ます。レントゲン検査も超音波検査と同様、無麻酔で検査を行うことが出来ます。検査中、横になってもらう時間も超音波検査と比べると短時間なので、検査が苦手な子でも安心です。
【心電図検査】
心電図検査は聴診などの身体検査で不整脈が疑われる場合や、突然倒れてしまう失神が認められる場合などに行います。心電図検査では聴診だけでは検出することが出来ない不整脈も検出することが出来ます。心電図検査も他の検査と同様、無麻酔で行うことが出来ます。
【血圧検査】
血圧検査ではヒトの血圧と同じで動脈圧を測定します。心臓病の背景に高血圧が隠れていたり、高血圧が原因で心臓の構造に異常を生じる場合もあるため、心臓の検査を行う場合は同時に血圧の測定を行います。血圧測定も他の検査と同様、無麻酔で行います。
【血液検査】
血液検査は心臓病以外の病気の検査にも使われます。心臓病は他の臓器の疾患と密接に関連していることが多いです。そのため、血液検査を行うことで心臓の状態を確認すると同時に、全身の他の臓器が心臓に影響していないかを調べます。また、心臓病をかかえている場合に値が上昇するバイオマーカーの検査も血液検査で行います。健康診断の血液検査を行うときに、オプションで心臓病のバイオマーカーを追加し、手軽に心臓に関わる健康状態を調べることも出来ます。
まとめ
心臓の病気は、命に直接関わる病気です。しかし、発症初期は無症状であることが多く、症状が出て心臓病が発見された段階ではかなり病状が進行している事も少なくありません。
心臓病をなるべく早く発見し、治療につなげていくためには、聴診を始めとした各種検査を用いた健康診断が大切です。聴診で雑音を指摘された場合はもちろんのこと、聴診で異常がない場合でも心臓病が隠れている可能性があるため、心配な場合は検査を受けていただくことをおすすめいたします。
心臓の健康や病気に関してご心配のある方は、動物循環器認定医である院長が丁寧に対応させていただきますので、一度当院にご相談下さい。